次世代実践鍼灸の提案

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次世代実践鍼灸 5つの取り組み

「ストレス社会」「長寿社会」と呼ばれる現代社会において、健康美容鍼灸協会は、以下の5つの取り組みを核とする「次世代実践鍼灸」をご提案しています。

現代人のための鍼灸

社会環境の変化と新しい鍼灸の需要

健康美容鍼灸協会では、現代社会に増え続け、現代社会人を悩ませる、下記のような現代社会特有の疾患と症状の予防と治療、および、健康と美の維持・増進を、「現代社会における新しい鍼灸の需要」として位置付け、その需要に対してより高い水準でお応えすることが、私たちの「使命」であると考えています。そしてその使命を果たすことを目的として確立した独自のスタイルの鍼灸を、「現代人のための鍼灸」として利用者の皆様にご提案しています。

・ 眼精疲労
・ ドライアイ
・ 顎関節症
・ 緊張性頭痛
・ 後頚部や背部の重度の凝りや疼痛
・ 心因性腰痛(基礎疾患のない原因不明の腰痛)
・ イライラ
・ 不眠
・ 肌あれなど

鍼灸は紀元前の昔から行われてきた伝統的な治療法であり、昔はほとんどの人々が「肉体労働」に従事していました。一方、「ストレス社会」と呼ばれる現代社会では、多くの人々が「頭脳労働」に従事するようになり、特に先進国と呼ばれる国々の都市部では、人間関係や仕事上の「ストレス」に悩まされる人が増え続けています。また、現代社会では、「PC」(パーソナルコンピュータ)やスマートフォンなどの電子機器が広く普及し、圧倒的に多くの人々が、このような電子機器の使用を強いられる時代となりました。

そのため、鍼灸が発展した昔の時代には、鍼灸治療は、主として肉体労働に従事する人々を対象として行われていましたが、現代社会では、「頭脳労働」「ストレス」「電子機器」の使用などに起因して、眼精疲労、ドライアイ、顎関節症、緊張性頭痛、後頚部や背部の重度の凝りや疼痛、心因性腰痛、イライラ、不眠、肌荒れ、うつなど、昔の時代にはあまり見られなかった疾患や症状が急増しています。

このような現況から、私たち健康美容鍼灸協会は、人々を取り巻く生活環境や労働環境の変化、そして、それに伴って変化する疾患や症状の特性に応じて、鍼灸の考え方や実践方法にも、変わらなければならない部分があると考えています。

女性の社会進出と鍼灸

1985年、日本には「男女雇用機会均等法」という法律が制定され、女性の積極的な社会進出が実現されました。それ以前の日本では、男性は30歳、女性は25歳くらいまでが、おおよその「結婚適齢期」であるとされ、結婚をすると、女性は家庭に入って子育てに専念し、長く働くものではないというのが日本の常識でした。

そのため、男女雇用機会均等法が施行される以前には、家庭の外にある社会では、適齢期を過ぎた女性は比較的に例外的な存在でしたが、この法律の施行によって、女性たちは急激なスピードで社会進出を果たしていきました。そして、家庭で子育てに専念していた女性たちが外の世界に出たことで、それまでは男性ばかりであった企業や社会に「働く女性」が急増しました。

一方、このように積極的な社会進出を果たした結果として、働く女性たちは、家庭と仕事の両立という男性以上の負担を強いられるようになりました。さらに、女性たちも男性と同様のストレスを受けるようになり、これまでには経験しなかった疾患や症状に悩まされるようになりました。

このような現況により、現代社会に増え続ける、眼精疲労、ドライアイ、顎関節症、緊張性頭痛、後頚部や背部の重度の凝りや疼痛、心因性腰痛、イライラ、不眠、肌荒れ、うつなどの疾患や症状は、男性ばかりでなく、積極的な社会進出を果たした働く女性たちの間にも増える結果となったのです。

新しい鍼灸の需要と可能性

西洋の現代医学には、現代社会に増え続ける上記のような疾患や症状に対して、「決め手」となる治療法が存在しません。そのため、化学薬物を用いて表面的に症状を抑える手法が氾濫しているというのが、今の我が国の医療の現状です。

一方、一般にはあまり認知されていませんが、東洋の伝統医学の代表的な治療法である鍼灸は、これらの疾患や症状に対して優れた効果を発揮する場合が少なくありません。鍼灸は、特別の病気ではなく、はっきりとした原因がわからない上記のような様々な不快な症状の治療を得意分野としています。また、現代社会では、働く女性層という新しい鍼灸の利用者層も生まれています。20代半ば~50代の働く女性層は、以前にはおおよそ存在しなかった鍼灸の利用者層です。

灸は、数千年もの歴史と豊富な治療経験を有する伝統的で由緒ある治療法です。しかし、前述の通り、鍼灸が発展した昔の時代と現代では、社会環境や労働環境の著しい変化によって、人々を悩ます疾患と症状の特性が大きく変化しています。そのため、現代社会において、鍼灸がその真価と普遍性を発揮するためには、「温故知新」という言葉が示す通り、古いものを古いままにしておくだけでなく、新しい時代に対する現状認識とそれに応じた工夫を行う手順が必要となります。

一方、鍼灸の新しい利用者層である現代社会の働く女性たちには、男性にはない大きな特徴があり、「美容」という分野に大きな関心を持っています。そのため、以前は、美容を目的として鍼灸が利用されることはほとんどありませんでしたが、美容に対して高い関心を持つ働く女性層が、美容に対する鍼灸の効果を認め始めたことで、鍼灸には、新しい利用目的による新しい需要が生まれました。

そして、鍼灸ならではの大きな利点にひとつは、利用目的が美容であった場合にも、施術を通じて、働く女性たちの健康の維持・増進、および疾病予防にも貢献することができるということです。

現代人のための鍼灸

このような現況から、健康美容鍼灸協会は、現代社会人を悩ませる眼精疲労、ドライアイ、顎関節症、緊張性頭痛、後頚部や背部の重度の凝りや疼痛、心因性腰痛、イライラ、不眠、肌あれなどの疾患や症状の予防と治療、および、健康と美容の維持・増進を、「現代社会における新しい鍼灸の需要」として位置付けています。

そして、鍼灸の普遍性と利点をより活かし、より高い水準でこのような需要にお応えすることを目標に掲げて、下記のような取り組みを5原則とする独自のスタイルの鍼灸を確立し、「現代人のための鍼灸」として利用者の皆様にご提案しています。

現代人のための鍼灸 5原則

・ 現代社会人を悩ませる、現代社会特有の疾患と症状を対象とする
・ 現代社会特有の疾患と症状を、東洋の伝統医学の知識と視点で分析する
・ 現代社会における新しい利用者層である働く女性層の需要に応える
・ 製造技術の進歩によって品質と性能が向上した鍼灸針を使用する
・ 現代の鍼灸針の性能と品質に則して、使用方法の工夫と改善を行う

健康美容鍼灸協会は、「現代人のための鍼灸」を「次世代実践鍼灸」における主要な取り組みとして位置づけ、上記のような独自のスタイルの鍼灸を具体的な手段として、その実践と教育普及活動を推進しています。

養生法としての鍼灸

病気の治療と予防

新聞の報道によりますと、現在(2013年3月)、日本国内では、推定で約2,800万人の人が腰痛に悩まされており、そのうちの約8割が「原因不明」ということです。そして、このような腰痛に対する治療法としては、「抗炎症薬」「鎮痛薬」とならんで、「抗不安薬」や「抗うつ剤」が推奨されています[1]。

この事実は、現代の日本の医学や医療が、2,800万人もの人々の腰痛を「治していない」「治せていない」ということを示唆しており、腰痛になって医療機関を受診すると、「抗不安薬」や「抗うつ剤」を飲むことになる可能性が高いということを意味しています。

このような現況において、腰痛による苦痛を回避し、有害な副作用のある薬の服用を避けることのできる手段があるとすれば、それは、唯一「予防」という手段であると言えるでしょう。そして、鍼灸は、原因不明の腰痛をはじめとする、原因のよくわからない様々な不快な症状の予防と改善に、優れた効果を発揮する場合が少なくありません。

養生と治未病

東洋の伝統医学の大きな特徴のひとつは、「病気を治す」ことよりも「病気にならない」ことが重視されているということです。そのため、東洋の伝統医学では、「養生」と「治未病」を概念が非常に重視されています。東洋の伝統医学の基盤が確立された紀元前の昔には、現代のように、自然科学や医療が発展してはいませんでした。そのため、ひと度、何らかの病にかかると、健康を回復することは極めて困難であり、場合によっては、一命を落としてしまうことも少なくなかったと推察されます。

このような環境において、健康的な長寿を実現するために重視されていたのが「病にならない」という価値観です。このような事情から、古代の中国では、「養生思想」という健康で長生きをするための知識と考え方が高度に発展し、また、そのための方法として、「養生法」と呼ばれる様々な実践的な健康法も考案されてきました。「養生」とは「命を養う」という意味で、健康で長生きをするための様々な考え方と方法を指した言葉と概念です。

また、中国古代の著名な医学書である『難経』には「上工は未病を治し、中工は已病を治す」という記載があります。「未病」とは、「病気が発病する以前の段階」という意味で、病気を治すのは凡庸な医者で、優れた医者は病気が発病する前に治す(すなわち、発病を予防する)と考えられていたのです。

太古の時代には、ひと度、病気が発病してしまうと命取りになる場合もあったため、このような「治未病」という考え方が重視されていました。「治未病」とは、「未病を治す」という意味です。このように、「養生」と「治未病」という概念は、東洋の伝統医学の核心であり、その代表的な手法である鍼灸には、発病してしまった病気に対する治療手段としてだけではなく、「疾病予防」や「健康増進」を目的とした養生法として、優れた効果を期待することができます。

西洋の現代医学と東洋の伝統医学

西洋の現代医学は目覚ましい発展を遂げ、私たちは現代医学の発展によって数々の恩恵を受けています。そのため、私たちには、ともすれば「病気になったら病院に行けばいい」「お医者さんが治してくれる」「薬が治してくれる」と考えてしまう傾向があります。しかし、実際には、例えば、現代社会で増加している、がん、うつ病、各種の生活習慣病などの病気は、発病してしまってから治療することは極めて困難であるというのが現実です。また、現代医学にも「死角」はあり、東洋の伝統医学における「養生」や「治未病」に類する発想や方法はありません。

つまり、病気の「治療」ではなく「予防」、すなわち、病気にかからずに健康な生活を送るための「疾病予防」や「健康増進」という課題については、西洋の現代医学の分野には、具体的な戦略や方法がおおよそ存在していないということです。

一方、前述の通り、東洋の伝統医学では「養生」と「治未病」という概念が非常に重視されており、「疾病予防」や「健康増進」に関する豊富な知識、経験、手法があります。したがって、西洋の現代医学と東洋の伝統医学が、我が国の医療システムのなかで有機的な連携を行うことで、国民を本位とする理想的な医療サービスを実現することができ、結果として、国家の医療費の削減にも寄与することが可能となるでしょう。

鍼灸と自己治癒力

鍼灸という施術の最大の特徴のひとつは、治療行為でありながら「薬を使わない」ということです。そして、このような治療行為が成立するのは、人間の体に備わっている「自己治癒力」と呼ばれる、いわば、人体の「自前の力」を有効に利用していることが理由です。人は、傷を負ってもその傷を自然に治すことができます。つまり、人間は、極めて優れた「治す力」「治る力」が持っており、その力こそが「自己治癒力」と呼ばれる力です。

鍼灸の施術は、鍼を刺す、あるいは、灸を施すことによって、人間の体に物理的な刺激を与え、その刺激によって引き起こされる有効な反応を利用して、「自己治癒力」を発揮させるものです。したがって、鍼灸の施術における治癒力の主体は、薬などによる外部からの強力で強制的な力ではなく、人間自身の治癒力であるということです。

そして、鍼と灸は、その力を引き出すための手段であり、鍼灸の刺激によって起動した自己治癒力が、健康状態を損ねた心や身体を穏やかに治療していくのです。

健康と薬物依存

真の「健康」とは、薬に頼らずに元気な状態を保っていることであり、薬を飲みながら症状を抑えている状態は、むしろ「薬物依存」に類する状態であると言えるでしょう。そのため、人が自然に傷を治すことができるのと同様に、いかなる病気も、本来は薬に頼ることなく、自分の力で治すことが理想的であると言えるでしょう。

しかし、一方では、「病気になったら(なかなか)治らない」ということも、今も昔も変わらない現実です。

そのため、私たちが生活する東洋の世界に古来より培われてきた「養生」と「治未病」という思想は、自然科学や医療が高度に発展した現代社会においても、相変わらず、真に健康的な生活を送るための本質であると言えるのです。

疾病予防・健康増進と鍼灸

例えば、日本国内の各地で、腰痛に悩まされる2,800万人のうち、「抗不安薬」や「抗うつ剤」を喜んで飲む人はどれほどいることでしょう。前述の通り、それを回避するための唯一の手段が、「予防」という手段です。

昨今では、現代医学の分野でも、「疾病予防」や「健康増進」という概念が認められるようになり、「早期発見、早期治療」ということの重要性も指摘されるようになりました。このような現況において、健康美容鍼灸協会では、東洋の世界に古くから培われてきた「養生」と「治未病」という考え方、そして、治療手段としての鍼灸ばかりでなく、「疾病予防」や「健康増進」を目的とした鍼灸の教育普及活動に力を注いでいます。

脚注 1. 朝日新聞 2013年3月24日(日)

健康美容鍼灸

東洋の健美

「健康美容鍼灸協会」の名称が示す通り、私たちは、健康と美の維持、増進を目的とした鍼灸の教育普及活動を推進しています。1985年に「男女雇用機会均等法」が施行されて以来、日本では、女性たちが積極的な社会進出を果たしました。

そして、社会に出て働く女性たちには、「美容」という分野に高い関心を持っているという特徴があります。そのため、以前の日本では、美容を目的として鍼灸が利用されることはほとんどありませんでしたが、働く女性層を中心とした女性たちが、美容に対する鍼灸の効果を認め始めたことで、鍼灸には、新しい利用目的による新しい需要が生まれました。

一方、鍼灸の発祥地である中国には、古来より、「健やかな身体は美しい」「人間の自然美は健康を基礎として成立する」という思想が存在し、装飾美容以外の美容は、伝統医学の一部として発展してきました。装飾美容とは、毛髪に手を加えたり、顔面部に化粧品類を塗布するなどの方法によって、人体に装飾を施すことによる美容の手法です。

一方、美容を目的として、顔面部の皮膚の状態を改善したり、外見的な老化を予防したり、体形を美しく整えたりすることは、装飾を施すことによる美容ではなく、人体の健康状態を維持、増進することによって実現されるものです。そのため、私たちが生活する東洋では、古くから、「美容」は「健康」「長寿」「養生」などのことと密接に関係するものであると考えられてきました。

現代でも、中国の伝統医学では、「健康」と「美」は一連で一体を成すものであると認識されており、「中医美容学」という美容を専門に取り扱う専門科目も存在します。中医美容の目的は、全身と局所における健康状態の維持、増進、回復をはかることによって「健美」を実現することであるとされています。

「健美」とは、東洋に存在する人間の自然美に対する観念であり、「健康を基礎として成立する人間の自然美」という意味の言葉です。そして、鍼灸をはじめとする伝統医学の知識や手法が、健美を実現することを目的として積極的に用いられています。

美容と鍼灸

一方、これまでの日本の鍼灸の世界では、「鍼灸は医療であるべき」という根強い意識があり、また、美容という分野を「蔑視」あるいは「タブー視」する風潮もありました。そして、このような事情から、美容を目的とした鍼灸は、日本ではほとんど行われてきませんでした。

日本国内において、「美容鍼灸」という分野の鍼灸が、今のように広く認知されるようになったのは、2006年に「医道の日本社」という出版社から「医道の日本臨時増刊 No.11 特集:美容と鍼灸」が刊行され、多くの専門家の目に止まったことが大きなきっかけでした。

本誌が刊行される以前の日本では、美容を目的とした鍼灸を行っていた鍼灸師は全国でも皆無に等しく、インターネットで得られる情報ですら、例えば、「Google」や「Yahoo! JAPAN」で「美容鍼灸」というキーワードで検索した場合にも、10件にも満たないような状況でした。

ところが、現在(2013年5月)では、「美容鍼灸」のキーワードによって、数万件もの情報がヒットするまでになりました。美容鍼灸は、極めて短期間のうちに、表面的には飛躍的な普及を遂げたのです。

日本における美容鍼灸の提唱

健康美容鍼灸協会代表の北川毅は、中医美容学、および、美容を目的とした鍼灸の研究と実践を積み重ね、鍼灸 = 医療行為であると考えられていた日本の鍼灸業界に、初めて「美容鍼灸」と「健美」という概念を提唱した美容鍼灸のパイオニアです。

日本において、美容を目的とした鍼灸が、健全に普及し、発展していくためには、先ず、日本の鍼灸の業界に対して「美容鍼灸」という概念を提唱し、それに対する認識と理解を広めることが不可欠であると北川は考えました。

そして、2006年8月に刊行された「医道の日本臨時増刊No.11 美容と鍼灸」において、北川は、序文に相当する「Chapter1なぜ、鍼灸で美容なの?
~ 鍼灸師が「健美」をリードする」を執筆し、美容を目的とした鍼灸の本質と可能性について世に問いました。結果として、「医道の日本臨時増刊 No.11 美容と鍼灸」は、発売直後から記録的な売れ行きを示し、北川が執筆した「Chapter1 なぜ、鍼灸で美容なの?」は多くの専門家の評価を得ることになりました。

そして、その後は、良くも悪くも、美容鍼灸という新しい分野の鍼灸は、急激とも言えるスピードで広く行われるようになりました。「良くも悪くも」というのは、美容鍼灸が、一般利用者の皆様から注目され始めたことに便乗して、多くの専門家が、正しい知識と一定水準の技術を身に付けることなく、唐突にこの分野の鍼灸を行うようにもなり、さらには、鍼灸の本質から逸脱した「美容鍼灸まがい」というべき鍼灸すら見受けられるようになったからです。

そして、このような現状において、利用者の皆様にとっても、私たちにとっても、最も深刻な問題となるのは、未熟な技術や不適切な施術によって、利用者の方が「不満足な結果」や「皮下出血によるトラブル」などの不利益を被る事例が増えているということです。

美容鍼灸から健康美容鍼灸へ

このような現況から、私たちは、もう一度「なぜ、鍼灸で美容なの?」という根本的な疑問に立ち返り、「人間の自然美は健康を基礎として成立する」という思想を礎とする、本質的な健康と美に関わる鍼灸を広めていきたいと考えています。

そのため、健康美容鍼灸協会は、便宜上、「美容鍼灸」や「美容鍼」という言葉を用いる場合もありますが、玉石混淆する「美容鍼灸」の領域から脱却し、「健康美容鍼灸」という概念を提唱しています。

前述の通り、「健康」と「美」は、一連で一体を成すものとして繋がっており、人間の自然美は健康を基礎として成立しています。例えば、「美しいお肌」というのは「顔面部の局所の皮膚の健康状態が良好である」ということと同じであり、「プロポーションが良い」というのは、「均整のとれた体形」と同じことを意味しています。

同時に、このような事実は、伝統医学の治療法であり養生法である鍼灸が、局所と全身の健康状態の維持、増進、回復を通じて、人間の自然美を高める力を持つことを示しており、利用目的が美容であった場合にも、施術を通じて働く女性たちの健康の維持・増進、ひいては生活習慣病をはじめとする各種の疾病の予防に寄与することができることを示唆しています。

このように、鍼灸は、その特性によって、「美容」を主目的として行う場合であっても、「健康」にも極めて深く関係していることから、健康美容鍼灸協会では、美容を主目的とした鍼灸を「健康美容鍼灸」という名称を用いて実践しています。

化学物質や外科的手術に依存する様々な美容の手法が氾濫する現況において、「人間の自然美は健康を基礎として成立する」という古来の思想は、美容に高い関心を持ち、より美しくなりたいと願う女性たちに対して、真に美しくあるための基本原理を示していると言えます。

健康美容鍼灸協会は、東洋の古典的な思想と鍼灸を通じて、このような基本原理を啓発していくことも使命であると考えています。そして、女性たちが、美容という目的を通じて健康面にも目を向けることで、鍼灸の本来の目的である「養生」や「治未病」、すなわち、利用者の皆様の健康の維持、増進、ひいては疾病予防に繋げていくことを目指しています。

新しい技法による鍼灸

鍼灸の施術を、円滑で安全に行うためには、重要で不可欠な条件が2つあります。1つは、私たち鍼灸師の技術力であり、もう1つは鍼灸針(鍼灸の施術に用いられる針 以下、針と記載します)の品質と性能です。

鍼という施術において、常に大きな課題となってきたことの一つは、施術によって生じる「痛み」の問題です。痛みとは主観的な感覚であることから、痛みの感じ方には人によって個人差がありますが、鍼の施術では、体に針を刺すという行為が行われるため、常にある程度の痛みを伴う可能性があります。また、針が毛細血管を傷つけることで、「皮下出血」やわずかの「出血」を伴う可能性もあり、皮下出血に起因して「青あざ」が生じる場合もあります(青あざは1週間から数週間程度で自然に退少し、長期間にわたって残ることはありません)。

このような現象は、鍼の施術の特性によって生じるため、完全に回避することは不可能ですが、最小限にとどめるための努力を行うことは私たちの使命です。そして、私たち鍼灸師の技術力、および、道具としての針の品質と性能だけが、このような不都合な現象を低減させることができます。

そのため、私たち健康美容鍼灸協会は、利用者の皆様の満足度と安全性の確保という観点から、品質と性能に優れた「日本製ディスポーザブル鍼灸針」(使い捨ての針)の使用を推奨しています。また、その品質と性能を最大限に引き出すことを目的として、独自に確立した新しい鍼灸の技法を、利用者の皆様にご提案しています。

鍼灸針の歴史と変遷

鍼灸の歴史は紀元前の古代にまでさかのぼり、針の形態は時代とともに変遷を遂げています。針の起源は、石器時代の中国に発明された「砭石」と呼ばれる細くて鋭く尖った石器であるとされ、砭石で体表を刺激したり、出血を促したり、膿を排出させたりしたことが、鍼治療の起源であるとされています。

その後、砭石は、動物の骨で作られた骨針、竹で作られた竹針などに姿を変え、金属加工技術と道具の発達に伴い、中国の戦国時代頃に、現在のような金属製の針へと進化しました。

紀元前1200年頃に著されたとされる中国最古の医学書である「黄帝内経」には、針と鍼灸治療についての詳しい記載があり、当時使用されていた様々な形態の針が、9種類に分類されています。この9種類の針は「古代九針」と呼ばれており、現代において使用されている様々な種類の針の原形として位置付けられています。現代では、製造技術の進歩により、針の品質と性能は著しい進化を遂げています。そして、現代における我が国の針の製造技術は、世界でもトップレベルの水準を誇っています。

日本製ディスポーザブル鍼灸針の使用

現在、日本では、ステンレス製ディスポーザブル鍼灸針が針の主流となっています。現代の日本の製造技術は、直径が0.012㎜という極めて細い針の製造を可能とし、針先の切れ味についても飛躍的な機能性を実現しています。

針の品質と性能が優れていれば、それに伴って、施術によって生じ得る「痛み」「出血」「皮下出血」などの可能性も低減されるため、私たち鍼灸師は、針の品質と性能が高ければ高いほど、円滑で安全な鍼の施術を実現することができます。鍼灸針の製造技術の進歩は、利用者の皆様にも私たち鍼灸師にも、一定の恩恵を与えていると言えるのです。

また、健康美容鍼灸協会では、本会が提唱する「健康美容鍼灸」の一環として、顔面部の美容を目的とした鍼灸を積極的に実践していますが、顔面部は最も人目につきやすい部位であることから、皮下出血による青あざが生じた場合には、他の部位よりも大きな問題となります。そのため、特に顔面部における鍼灸の施術では、品質と性能に優れた針を選択することが望まれます。

このような事情により、私たち健康美容鍼灸協会は、利用者の皆様の満足度と安全性の確保という観点から、品質と性能に優れた日本製ディスポーザブル鍼灸針の使用を積極的に推奨しています。

従来の鍼の技法

現在、針を刺す方法には、大きく分けて2つの方法があります。中国をはじめとする多くの国々では、一般に、指で針の柄の部分をつまみ、目標とする皮膚上の一定の部位に対して、針を投げ入れるようにして刺す「速刺法」と呼ばれる方法が用いられています。

鍼の施術に伴う痛みは、針先が皮膚を穿刺する時に生じるため、穿刺を迅速に行うことで、その痛みはある程度軽減させることができます。速刺法は、施術に伴う痛みを極力回避しながら円滑に針を打つために、「勢い」と「速度」を利用した技法です。

速刺法では、針を投げ入れるようにして刺す方法が用いられるため、技術力が未熟であった場合には、目標とする位置に正確に針を打つことが難しく、また、針を刺す時に痛みを与えることになります。

一方、日本では、「鍼管」と呼ばれる管を使用して針を打つ「管鍼法」と呼ばれる方法が、一般的な方法として用いられています。管鍼法は、より少ない痛みで、より正確な位置に針を打つために、鍼管という補助器具を利用した技法です。

管鍼法では、針よりもやや長さの短い鍼管に針を挿入し、針先と鍼管の先端を皮膚に当て、鍼管の後部から突出した針の柄の部分を指で素速く叩くことによって、穿刺を迅速に行う方法が用いられます。管鍼法は、江戸時代に日本で考案された日本独自の方法であり、以来、管鍼法は、日本の鍼の標準的な技法として、最も一般的に実践されています。

日本製ディスポーザブル鍼灸針と二指推鍼法

健康美容鍼灸協会では、高度に進化した日本製ディスポーザブル鍼灸針の品質と性能を、最大限に引き出すことを目的として、独自に確立した「二指推鍼法」(にしすいしんほう)という技法を実践しています。

前述の通り、鍼という施術では、常に「痛み」や「皮下出血」を伴う可能性がありますが、最新の日本製ディスポーザブル鍼灸針を使用することで、施術に伴うこれらの問題は大幅に改善することができます。

しかし、これほどまでに優れた針の製造が実現されているのであれば、その使い方についても、新しい検討を行うことが必要になってくるでしょう。新しい針を取り扱う場合には、旧来の方法に縛られることなく、新しい使い方を工夫することで、これまで以上に、円滑で安全な施術を実現することができるであろうということです。

二指推鍼法は、このような発想から生まれた新しい針の刺し方であり、最新の日本製鍼灸針の品質と性能に立脚した技法であると同時に、その潜在的な機能性を、これまで以上に引き出すことを実現しています。

二指推鍼法の特徴

従来の針の品質と性能では、痛みを避けて円滑に針を刺すためには、針を打つ時の「勢い」と「速度」が不可欠な条件となっていました。そのため、「速刺法」でも「管鍼法」でも、穿刺の過程は、勢いと速度に依存して行われていましたが、現代の日本製鍼灸針は、勢いや速度を利用しなくても、おおよそ無痛で円滑に刺すことができる水準に到達しています。

ところが、このような実情に反して、圧倒的に多くの鍼灸師が、相変わらず、江戸時代に考案されたまま方法を、何の疑問も持たずに用いているというのが、今の日本の鍼灸の臨床現場と教育現場の現状です。

二指推鍼法は、日本製ディスポーザブル鍼灸針を使用して針を打つ場合には、その品質と性能を合理的に利用することで、必要以上の勢いや速度は不要であり、原則として、鍼管を用いる必要もないという発想から生まれた技法です。そのため、「鍼管を使わない」「勢いや速度に依存することなく針を刺す」ということが、二指推鍼法の技法上の最大の特徴です。

二指推鍼法は、鍼管を使わずに、母指と示指の二指だけを用いて針の穿刺刺入を行う技法で、最初に針先を皮膚の表面に軽く当て、親指と人差し指の2本の指の力で、針先に圧力をかけていくことで針を刺します。

この技法の大きな利点は、最初に針先を目標とする位置の皮膚に当て、角度と深さを決めてから針を刺すため、目的とする位置、角度、深さに対して正確に針を刺すことができるということです。二指推鍼法は、鍼管を使用しないという点では、中国の速刺法と共通していますが、穿刺刺入を勢いと速度に依存して行うことはありません。

穿刺の過程が、これまでの技法に比べて、比較的にゆっくりとした自然な速度で行われることが、二指推鍼法の特徴です。そして、このように極めて単純な方法で針を刺すことを可能にしたのは、我が国の優れた鍼灸針の製造技術であると言えるでしょう。

脱鍼管という選択

日本の鍼灸の臨床現場と教育現場で広く採用されている管鍼法が考案されたのは、300年以上も昔の江戸時代のことです。管鍼法は、当時としては、正確な位置に円滑に針を刺すことを可能にした画期的な技法であったと言えるでしょう。

しかし、一方では、江戸時代の針を円滑に刺入するために考案された江戸時代の技法であり、飛躍的な進化を遂げた現代の鍼灸針を使用する場合に、旧来の技法を用いることが常に最善の方法であるとは限りません。現代の「新しい鍼灸針」を使用するためには、その品質と性能に見合った「新しい技法」を検討することで、これまで以上にその潜在力を引き出すことが可能となるでしょう。

また、鍼管は、針をより円滑に刺すための「補助器具」に過ぎず、施術そのものに不可欠なものではありません。二指推鍼法は、このような事情から、あらゆる固定観念を排除して考案された現代の鍼灸針を使用するための新しい技法です。

健康美容鍼灸と二指推鍼法

>>正確な刺針を実現

健康美容鍼灸協会では、本会が提唱する「健康美容鍼灸」の一環として、顔面部の美容を目的とした鍼灸を積極的に実践しています。

美容を主目的とした鍼灸では、顔面部に対して針を打つ機会が多くなりますが、顔面部のツボに針を打つ場合には、ツボに対して正確に打つことが求められます。特に「睛明」(せいめい)や「陽白」(ようはく)などのツボに針を打つ場合には、1ミリ未満の誤差によっても適切な反応が得られない場合があります。

一方、鍼管には一定の内径があり、特に、ディスポーザブル鍼灸針に付属しているプラスティック製の鍼管には、内径が比較的に大きいものも少なくありません。そのため、このような製品を使用して針を打つ場合には、鍼管の内径の大きさに起因して、目標とするツボや位置に対して正確さが失われることになります。

したがって、このようなツボに対して、正確に針を打つためには、管鍼法を用いることが必ずしも理想的な選択であるとは言えません。一方、鍼管を用いずに刺針を行う手法では、最初に針尖を皮膚に接触させてから切皮を行うことができるため、目的とする穴位や部位に対して正確な刺鍼を実現することができます。

>>迅速な刺針を実現

私たちが実践する健康美容鍼灸の手法では、顔面部に100本〜200本ほどの針を打つ場合があります。使用する針の本数が多い場合には、一定時間内に迅速に針を打つことが求められます。

管鍼法では、一連の過程に一定の時間を要するため、1本の針を打つことにかなりの時間を要することになります。一方、二指推鍼法を用いた施術では、極めて迅速に針を打つことができます。

>>柔軟な刺針を実現

顔面部は形態的に凹凸が顕著であり、様々な角度で針を打つことが求められますが、二指推鍼法を用いることで、要求される刺入の角度に対して極めて柔軟に対応することができます。

また、しわやほうれい線に対して、非常に短い間隔で集中的に針を打つ場合にも、二指推鍼法により、極めて柔軟な刺針を実現することができます。さらに、鍼管を使わずに針を打つことで、顔面部に限らず、頭部や肩背部などに対しても極めて合理的な刺針を行うことができます。

穿刺による不快感を解消

管鍼法では、穿刺の過程で鍼柄の後部をと叩打する「弾入」という方法が行われますが、体幹部や手足に針を打つ場合とは異なり、頭部や顔面部に打つ場合には、弾入時に鍼管が皮膚に触れる感覚や「トントン」と叩打される感覚を不快に感じる人も少なくないようです。

一方、二指推鍼法では、鍼管が皮膚に触れることはなく、叩打される感覚も伴いません。

ディスポーザブル鍼灸針と地球環境とコスト

通常、私たちが使用しているディスポーザブルタイプの鍼灸針には、使い捨てのプラスティック製の鍼管が付属しています。つまり、地球上のいたるところで、毎日、使用された鍼灸針と同じ数のプラスティック製の鍼管が、ゴミとして廃棄され続けているということです。

このような事実は、「Ecology」(自然環境保護)の視点から見た場合に、決して理想的な状況であるとは言えません。補助具としてのプラスティック製の鍼管をなくすことができれば、この問題が解決されるばかりでなく、製品としての針の製造コストを削減することもできることから、販売価格を従来よりも低価格にできる可能性もあります。

また、結果的には、利用者の皆様に提供されるサービスの価格にも反映される可能性があるでしょう。

新しい実践現場での鍼灸

時代の変遷と実践現場の変化

モノやサービスを提供する「場」の形態は、時代の変遷に伴って変化しています。

例えば、街中の写真屋さんが取り扱っていたカメラは、大手の量販店で販売されるようになり、喫茶店はカフェに姿を変え、食堂は各種のレストランに変わっています。そのため、昔のような写真屋さんや喫茶店は、次々と街からその姿を消していってしまいましたが、カメラの販売台数やコーヒーの消費量が減っているかといえば、むしろ、逆です。

従来はフィルムを使用していたカメラはデジタルカメラに取って代わり、昔は、ほとんどカメラを使っていなかった女性たちも手軽に写真撮影を行っています。また、コーヒーの種類も多様化して、現在では、様々な形態のカフェで様々な種類のコーヒーを楽しむことができるようになりました。

私たちが実践する鍼灸の現場についても、同様のことが言えるでしょう。一般に、鍼灸は「鍼灸院」あるいは「治療院」と呼ばれるところで行われています。しかし、一方では、健康と美容に対する需要が益々高まっている現在、日本国内には、様々な形態の健康増進施設が開設されるようになっています。

特に、近年では、「スパ」(SPA)と呼ばれる施設が、世界中で一大ブームを巻き起こしており、日本国内でも、数多くのスパが運営されるようになりました。

スパ(SPA)と鍼灸

「スパ」は、古代ローマ帝国時代に、鉱泉の治療効果を利用してローマ人たちが建設した「テルマエ」と呼ばれた療養所を起源とし、近代では、イギリスやアメリカから世界に広がっている健康増進施設です。

「ストレス社会」「長寿社会」を反映して、今、スパに対する需要は世界的な規模で急速に拡大しています。2004年5月、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜において「ISPA Conference & Exhibition 2004 Japan: 国際的なスパに関する会議と展示会」が開催されたことをきっかけとして、日本にも本格的なスパブームが到来し、経済産業省が発表した『平成19年度スパ・サービス産業の発展に向けた現状と課題に関する調査研究』によれば、国内のスパの施設数と推定市場規模は、平成18年度では1,673店舗で5,600億円、平成19年度では、2,944店舗で7,100億円とされており、27%の市場拡大と76%の店舗増加を果たしています。

経済産業省発表 『平成19年度スパ・サービス産業の発展に向けた現状と課題に関する調査研究』より

スパの実態は、このようなヨーロッパ由来の新しい健康と美の増進施設です。一方、私たち鍼灸師の使命は、特定の疾患や症状の治療、および、その予防であることから、健康と美の維持施設としてのスパで行われる業務は、私たち鍼灸師が担ってきた業務と本質的に合致しており、同時に、スパは鍼灸師がその本領をいかんなく発揮することができる鍼灸の理想的な実践現場になり得ると言えるのです。

一方、日本の鍼灸の業界や鍼灸師たちは、今日まで、このようなスパ産業とおおよそ関わりを持ってきませんでした。上記のような事情から、私たち鍼灸師とスパ産業に積極的な関わりがないという現状は、スパの利用者の方々にとっても、鍼灸の業界にとっても、大きな損失であると言えるでしょう。

>>チバソム・インターナショナル・ヘルスリゾートにおける日本の鍼灸

健康美容鍼灸協会代表の北川毅は、自らが、東京港区において「YOJO SPA」(養生スパ)というデイスパを運営するかたわら、アジア最高峰のディスティネーションスパとして知られるタイの「チバソム・インターナショナル・ヘルスリゾート(以下 チバソム)」(Chiva-Som International Health Resort)からの招聘を受け、鍼灸を専門とするゲストコンサルタントとして、毎年数回、2〜3週間にわたり、利用客を対象に鍼灸治療と健康美容鍼灸を行っています。

「ディスティネーションスパ」とは、スパの分類上の名称であり、このような施設が、減量、禁煙、美容などの特定の目的を実現するために滞在利用されることから、「目的」という意味の「ディスティネーション」という言葉が用いられています。

現在、世界中に存在する様々な形態のスパは、いずれもディスティネーションスパを源流として派生したものであるため、ディスティネーションスパは、現代型スパの原点として位置付けられています。そして、チバソムは、イギリスの「コンデナスト・トラベラー」の読者投票で過去10年間にわたりトップ3に選ばれ、米国の「トラベル+レジャー」においては「ワールド・ベスト・デスティネーションスパ」として選ばれた経験があり、権威ある旅行各誌で高く評価されるアジア最高峰の高級ディスティネーションスパとして知られています。

デイヴィッド・ベッカムやナオミ・キャンベルなどセレブリティも贔屓にするチバソムは、世界各地の富裕層を顧客として約6割をリピート顧客としています。そして、このようなアジア最高峰のスパであるチバソムが提供するサービスとして、今、世界中の利用客から高い評価を受けている施術が、日本の「鍼灸」です。

このことは、鍼灸がスパの利用目的を果たすための手段として非常に有効であるということであり、日本人が行う日本の鍼灸が、世界中から集まる利用客の需要に対して高度な水準で応えているということを示しています。

同時に、このような事例は、スパが鍼灸を実践するための新しい現場として、理想的な条件と環境を備えていることも示唆しているため、健康美容鍼灸協会は、日本国内のスパにおいても、鍼灸がより積極的に行われるべきであろうと考えています。

温泉とテルマエ

日本には「温泉」という固有の文化が存在します。仏教、漢字、そして私たちの専門である鍼灸など、日本の文化の多くは、中国から朝鮮半島を経由して、あるいは直接日本に伝来したものであり、日本の文化は中国の影響を強く受けています。

一方、温泉は、基本的には中国や韓国の影響を受けていない日本特有の文化です。古来、温泉の本質と利用目的は「湯治」でした。湯治とは、温泉地に一定の期間滞在し(通常は2週間〜3週間)、温泉に入浴しながら特定の疾患や症状の治療や保養を行うことです。

一方、スパの起源である古代ローマの「テルマエ」も、ローマの遠征軍が鉱泉の水を健康の回復のために利用したことから始まります。ローマ人は、鉱泉や温泉に、長い行軍と戦闘で受けた兵士たちの苦痛を軽減する効果があることを知っていたのです。

そのため、日本の温泉と同様に、テルマエは鉱泉が湧き出る土地に建築され、テルマエで行われた治療や保養には、その土地に湧き出る鉱泉の効能が利用されました。このように、古代ローマにおけるスパの源流と、「湯治」を目的として利用された時代の日本の「温泉」の文化には、多くの共通点を見ることができます。

古代ローマ帝国と日本という時空の全くことなるところで、それぞれに発展したスパと温泉の間に、これほどの共通性があることは、非常に興味深いことです。

温泉と日本型スパ

現在でも、温泉旅館が、健康の維持・回復・増進を明確な目的として、利用客に対して計画的な入浴プログラムや健康食などを提供する場合には、スパの概念と本質的に合致しているため、その温泉旅館はスパの一形態であると認めることができます。

同時に、このような共通性から、海外から見れば「温泉」は「日本のスパ」として認知される場合があると同時に、私たち日本人の立場では「スパ」は「ヨーロッパ由来の温泉」として認めることもできるでしょう。

しかし、一方では、多くの日本人が、今でも「温泉」=「スパ」として温泉とスパを混同し、完全に同一視してしまっている傾向もあるようです。また、「温泉」という言葉が英語に翻訳される場合に「SPA」が訳語として採用されているケースも少なくありません。

確かに、上記のように、スパと温泉には多くの共通点がありますが、両者は起源も歴史も異なる個別のものです。そのため、これらを混同することなく、我が国の温泉文化とヨーロッパ由来のスパ文化のそれぞれについて正しく理解することで、私たち日本人は、温泉と湯治を、日本特有の伝統的な「日本型伝統スパ」として、広く世界に誇ることができるでしょう。

日本は自他ともに認める温泉大国です。そのため、私たち日本人は、ヨーロッパで発展したスパの文化について正しく知り、私たち自身の温泉文化についても再認識することで、日本におけるスパの健全な普及と発展を実現することができるのです。

日本型スパと鍼灸

現代のスパでは、健康と美の増進を目的とした様々なサービスが提供されており、そのサービスの主体は、温浴や水浴よりも、むしろ、専門の技術者によって行われる多様な「トリートメント」へと移行している傾向があります。

しかし、日本は古くから温泉という天然の有効資源に恵まれた温泉大国です。そのため、その資源を利用した入浴プログラムを、健康と美の維持・増進を目的として積極的に活かしていくことには大きな意義があります。

一方、日本の温泉旅館でも、出張によるあん摩やマッサージの施術が行われてきましたが、現代のスパにおける各種のトリートメントのように、主要なサービスとしては位置付けられてきませんでした。

健康美容鍼灸協会は、日本型スパとしての温泉施設において、トリートメントの一環として、鍼灸を積極的に実践することができれば、温泉と鍼灸は、共に真価を発揮することができるであろうと考えています。

さらに、鍼灸をはじめとする伝統医学が、湯治を起源とする日本特有の入浴プログラムと結び付くことで、日本の温泉は、「肥満やメタボリックシンドロームの解消」「ストレス性疾患の予防と治療」など、特定の目的をもって利用する日本型のディスティネーションスパ(目的志向型スパ)として、その潜在力を発揮することができ、「ストレス社会」「長寿社会」と呼ばれる現代社会を生きる人々の健康的な社会生活に寄与することができるでしょう。

スパトリートメントと法令遵守

スパでは、健康と美の増進を目的とした様々なサービスが提供されており、その主要なサービスのひとつに、「トリートメント」と呼ばれるものがあります。

「トリートメント」とは、人によって行われる施術全般を指す言葉で、現在のところ、その実態は様々な種類の外来の「マッサージ」が主体となっています。そして、日本国内のスパでは、「リラクゼーションマッサージ」「足裏マッサージ」「タイ古式マッサージ」など、従来の日本では行われていなかった多様な海外のマッサージが、スパのサービスとして行われています。

しかし、日本には「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」という法律が存在し、マッサージという名称を標榜して、マッサージに類する施術を行う場合には、「あん摩マツサージ指圧師」の国家資格を取得することが義務づけられています。

ところが、国内のスパで、これらの施術に携わる技術者のほとんどが、実際には国家資格を持たない無資格者であるというのが、今の日本のスパ産業の実態です。さらには、スパでトリートメントに従事する技術者が「スパセラピスト」という名称を標榜し、「スパセラピー」という名称を用いて、治療まがいの行為を行っている事例も少なくありません。

元来、「セラピスト」(Therapist)とは「治療家」や「療法士」を意味する言葉です。そして、周知の通り、法治国家である日本において、法的に「治療家」や「療法士」としての身分が認められているのは、「はり師」「きゅう師」「あん摩マッサージ指圧師」「柔道整復師」「理学療法士」「作業療法士」「言語療法士」に限定されています。

したがって、「セラピー」や「セラピスト」を標榜することが認められているのも、法律上は上記の国家資格の有資格者に限られています。ところが、現実には、スパという外来の新しい健康増進施設では、「セラピー」や「セラピスト」というカタカナ語を使用することで、関係法規(あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律)に反する業務が公然と行われているというのが、今の日本の実情です。

さらに、上記のような「スパセラピスト」のなかには、利用者の身体を預かるために必要な知識と技術を持たないインスタントな技術者も少なくありません。そして、このような現状は、コンプライアンス(法令遵守)や倫理よりも、商売上の利益を優先する日本のスパ産業の不健全な一面であると言えるでしょう。

スパにおける有資格者による施術の提供

前述の通り、スパは日本人にとって新しい形態の健康増進施設であり、日本ではその概念と本質が正しく理解されていないまま、ブームに乗って急速に発展した経緯があります。

そのため、現在でも、多くの日本人にとって、スパは実態の不明確な存在であり、「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」に対するコンプライアンスの問題も、その不明確さに起因して曖昧に放置されたままの状態です。そして、行政も、このようなスパに関連する無資格者問題に対する具体的な対策を、何らも行ってはいないというのが実情です。

平成19年度において、既に2,944店舗、7,100億円という莫大な規模に発展したスパ産業において、技術者のほとんどが無資格者であるという現況は、「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」の効力が実質的に形骸化しているということばかりでなく、一般消費者の安全面と安心面における問題を内在していることも示唆しています。

このような現状から、健康美容鍼灸協会は、日本国内におけるスパにおいては、有資格者による施術の提供を、積極的に推進していくべきであると考えています。

東洋の伝統医学と鍼灸で日本型スパの確立を目指す

世界各地で幅広い利用者層を獲得しているスパは、健康と美の維持・増進、疾病予防、アンチエイジング、つまり、「健康で若々しく長生きをすること」を目的とした施設であり、鍼灸と鍼灸師の業務目的と本質的に合致しています。

また、東洋の伝統医学では、古来より、疾病の治療以前に、「治未病」や「養生」という考え方が重視されており、このような思想やそれに基づく知識、技術、経験は、スパにおいて大いに活かすことができ、伝統医学の代表的な手法である鍼灸は、スパにおいて、その本領をいかんなく発揮することができます。

しかし、一方では、私たち鍼灸師がスパの概念についての正しい知識を身に付け、その本質と実態を認識することも必要となるでしょう。このような実状から、健康美容鍼灸協会では、新しい実践現場としてのスパにおける鍼灸の実践とその教育普及活動に力を注いでいます。

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